湾岸アラブ諸国の人口動向
イスラム人口研究会
2000/12/19
林玲子
表 1.
湾岸アラブ諸国人口とアラブ諸国・イスラム圏の比較|
湾岸アラブ諸国人口 |
アラブ諸国人口 |
イスラム圏人口 |
|
27,901,000 |
232,675,000 |
1,278,244,000 |
*1998
年WHOデータをもとに作成2. 一般状況
湾岸諸国の中ではサウディ・アラビアが多くの国土面積と人口を擁しているが、一人あたり
GNPは低い。クウェイト、バハレーンは国勢調査をよく行っているが、その他の国ではデータが不足、もしくは入手が難しい。
表
2 各国基本事項|
クウェイト |
バハレーン |
カタル |
アラブ首長国連邦 |
サウディ・アラビア |
オマーン |
合計 |
|
|
人口(外務省)(a) |
2,255,000 |
643,000 |
522,000 |
2,580,000 |
20,070,000 |
2,215,000 |
28,285,000 |
|
人口(1998年:WHO) |
1,810,737 |
594,545 |
579,027 |
2,353,122 |
20,181,178 |
2,381,924 |
27,900,533 |
|
国土面積(km2) |
17,818 |
707 |
11,427 |
83,600 |
2,150,000 |
310,000 |
2,573,552 |
|
一人あたりGNP(US$) (b) |
20,190 |
8,640 |
11,340 |
18,240 |
7,150 |
4,940 |
|
|
建国年 |
1961 |
1971 |
1971 |
1971 |
1932 |
1650 |
|
|
国勢調査実行年 |
1957, 61, 65, 70, 75, 80, 85, 95, 2000 |
1941, 50, 59, 65, 71, 81 |
1970, 86 |
1968, 75, 80, 85 |
1962/63, 74, 92 |
1993,(2003) |
(a)
クウェイト1999年末、バハレーン1997年6月末現在、カタル1998年政府統計、アラブ首長国連邦1997年推計、サウディ・アラビア1998年世銀、オマーン1996年7月開発省発表。(b) UNICEF1999
3 人口
3-1 激しい人口増加
世界の人口増加と比べ、湾岸諸国の人口増加の割合は大きい(表
3、図 1)。 3 各国人口推移| Country |
1961 |
1965 |
1970 |
1975 |
1980 |
1985 |
1990 |
1995 |
1998 |
|
Bahrain |
-- |
-- |
-- |
<1,000,000 |
<1,000,000 |
417,210 |
503,022 |
586,110 |
594,545 |
|
Kuwait |
322,000 |
467,000 |
738,000 |
995,000 |
1,358,000 |
1,695,000 |
-- |
1,576,000 |
1,810,737 |
|
Oman |
-- |
-- |
-- |
1,000,000 |
1,000,000 |
1,000,000 |
2,000,000 |
2,000,000 |
2,381,924 |
|
Qatar |
-- |
-- |
-- |
<1,000,000 |
<1,000,000 |
<1,000,000 |
<1,000,000 |
1,000,000 |
579,027 |
|
Saudi Arabia |
-- |
-- |
-- |
7,000,000 |
9,000,000 |
12,000,000 |
15,000,000 |
18,000,000 |
20,181,178 |
|
U.A.E. |
-- |
-- |
-- |
1,000,000 |
1,000,000 |
1,000,000 |
2,000,000 |
2,000,000 |
2,353,122 |
*1998
年はWHOデータ、その他の年についてはクウェイト、バハレーンは国勢調査結果、その他はSESRTCIC (イスラム諸国統計経済社会研究教育センター)1 人口増加(1985=1としたときの割合)
3-2 本国人の人口増加
データが得られるクウェイトについてみると、高い人口増加は、特に
1975年より非クウェイト人の増加が寄与している。しかし、1975年以前でも、非クウェイト人は全人口の半分近くを占めており、建国以来の多民族国家であることがわかる。
図
2 クウェイトにおけるクウェイト人と非クウェイト人の人口推移

*
4 婚姻・出生
4-1 下がる出生率
1978
年から1998の20年間に、合計特殊出生率は大きく減少している。世界全体の出生率と比べると、湾岸諸国では1978年のレベルが高かったため、変化が大きい。また、バハレーン、クウェイトでは
2.9まで大きく減少しているが、サウディ・アラビア、オマーンでは依然5.8〜5.9と高いレベルである。表
4 湾岸諸国の合計特殊出生率(1978-1998)|
バハレーン |
クウェイト |
アラブ首長国連邦 |
カタル |
サウディ・アラビア |
オマーン |
世界 |
|
|
1978 |
5.2 |
5.9 |
5.7 |
6.1 |
7.3 |
7.2 |
3.9 |
|
1998 |
2.9 |
2.9 |
3.4 |
3.7 |
5.8 |
5.9 |
2.7 |
*WHO
なお、近年以下のような湾岸アラブ諸国を含む地域での出生・保健に関する調査が行われている。
表
5 アラブ諸国出生・保健に関する調査| 1987-89 |
Gulf Child Health Survey Programme |
|
1989-1996 |
Pan Arab Project for Child Development (PAPCHILD) |
|
1995- |
Gulf Family Health Survey (GFHS) |
|
1997- |
Pan Arab Project for Family Health (PAPFAM) |
4-2 高い近親婚割合
近親婚の割合は半数近くにのぼり、その中でも第1いとこ(
first cousin)婚が一番多くなっている。親世代より子世代に近親婚が増えている(ア首連)、近親婚の方が子供の数が多い(サウディ・アラビア)という結果がある。表
6 湾岸諸国の近親婚に対する調査|
国 |
近親婚割合 |
調査内容等 |
|
サウディ・アラビア |
52.0% |
1998 年、ダンマン市の既婚女性1,307人 |
|
〃 |
57.7 % |
1995 年、全国3,212世帯地域差があり、最高 80.6%、最低34% |
|
アラブ首長国連邦 |
50.0% |
1994/1995 年、ドバイ市、アル・アイン市の15歳以上女性2,033人、親世代39% から子世代50.5%に増加。 |
|
クウェイト |
54.3 % |
1983 年、対象5,007人 |
|
オマーン |
56.3 % |
2000 年、夫婦60,635組すべての結婚は同族結婚であるとも言える。 |
*Pubmed
より文献検索5 高い外国人比率と同国人化政策
湾岸諸国は、外国人の比率が高い。湾岸諸国全体では、
1975年に182万人であった外国人が、1980年では282万人に増加している。表
7 湾岸諸国の外国人比率| 1961 | 1965 | 1970 | 1975 | 1980 | 1985 | 1990 | 1995 | 最新 | |
| クウェイト | 49.7 | 52.9 | 53 | 52.6 | 58.3 | 59.9 | -- | 58.4 | 64 (1999) |
| バハレーン | -- | -- | -- | -- | -- | 36.4 | 33.2 | 38.2 | 39.2 (1997) |
| サウディ・アラビア | -- | -- | -- | -- | -- | -- | 27(1992) | 25 (1998) | |
| カタル | -- | -- | -- | -- | -- | 73(1986) | -- | -- | -- |
| オマーン | -- | -- | -- | -- | -- | -- | -- | -- | 28 (1996) |
| ア首連 | -- | -- | -- | -- | -- | -- | -- | -- | -- |
*
クウェイト・バハレーンは国勢調査、その他は各国概況、最新は外務省「各国・地域事情と日本との関係」
6 高齢化
湾岸諸国の高齢化は、非常に急速に進むと予測されている。また、表
8の2050/1999のクウェートの値8.33は、世界最高値である。これは、出生率低減による人口の高齢化の影響以外に、湾岸戦争後外国人労働者を制限し、1995年の国勢調査において総人口が減少したことによる計算上の要因が影響している可能性がある。 8 湾岸諸国の60歳以上人口割合%|
1999 |
2050 |
2050/1999 |
|
|
バハレーン |
5 |
24 |
4.80 |
|
クウェイト |
3 |
25 |
8.33 |
|
オマーン |
4 |
11 |
2.75 |
|
カタル |
4 |
21 |
5.25 |
|
サウディ・アラビア |
5 |
15 |
3.00 |
|
アラブ首長国連邦 |
5 |
24 |
4.80 |
|
世界 |
10 |
22 |
2.20 |
*"Population Ageing 1999",
国連人口部
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